パレスチナの平和を考える会

イスラエル出店に関するサンリオからの回答と出店強行についての抗議と要請

  1. 「ハローキティ・ストア」イスラエル出店に関するサンリオからの回答
  2. 出店強行についての抗議と要請

「ハローキティ・ストア」イスラエル出店に関するサンリオからの回答

以下は、アパルトヘイト国家イスラエルへの「サンリオ・ショップ」出店に関する公開質問書に対するサンリオからの回答です。

2011年6月29日パレスチナの平和を考える会 御中

貴会の質問に対する回答

株式会社サンリオ 総務部

貴会から、“今月下旬、テル・アヴィヴにオープンする予定の店舗第一号として、「ハローキティの店」をイスラエル国内18箇所(年内で8~10箇所)に開く予定であるとされています”というイスラエル紙情報について、6月13日付け質問書が送られてきました。

貴質問状に対するサンリオの見解を以下の通り申し上げます。

まず、最初に申し上げたいことは、サンリオは約50年間にわたって、「お互いに助け合い、励ましあって仲良く生きていくことが世界中の人々を幸せに導く道である」という企業理念を変わることなく続けてきた会社です。「スモールギフト・ビッグスマイル」のスローガンのもと「思いやり」と「友情」の思いを込めたキャラクター商品やテーマパーク、イベント、そしてアニメ等のキャラクターコンテンツを通して世界中を「仲良し」でいっぱいにすることを全社一丸となり目指しております。

世界の平和を希求することについて貴会の思いと通じ合うと思います。

サンリオのキャラクター商品は、今や世界中に流通しております。イスラエルにおいても以前から、サンリオのキャラクター商品は流通しておりますし、地場企業とのライセンスによる商品もあります。2001年頃にはイスラエルの会社が小売り店舗を立ち上げましたもありました(経営が悪化したため、現在はございません)。イスラエルでは、日本の著名企業の各種ブランド商品・製品が販売されているようですが、サンリオの場合は上述したように“世界中を「仲良し」でいっぱいにしたい”という一貫した企業理念に基づくものであり、そのための垣根のない商品販売、海外での販売である、ということを信じて頂きたいと思います。

そして、イスラエル紙情報についてですが、このテル・アヴィヴの店舗は上述の2001年頃にオープンした(その後閉店)小売店舗と同じで、サンリオの直営でもフランチャイズでもありません。サンリオのドイツ現地法人の卸売先
(資本関係もございません)が運営する小売店舗で、30平方メートル(約9坪)の小さな店舗です。尚、この卸売先は10月に南部のイーラットに60平方メートル(妬18坪)の店舗を出す予定と聞いています。今後、イスラエル国内18箇所(年内で8~10箇所)に開く予定という情報はこの卸売先の今後の期待でしょう。テル・アヴィヴの店舗の営業成績がよければ新店舗の展開があるかもしれませんが、現時点でサンリオが報告を受け承知しているのは、テル・アヴィヴとイーラットの2店舗です。

そして、これら店舗はサンリオの直営でもフランチャイズでもなく、資本関係もない卸売先の運営ですので、貴会からの質問を網羅してご説明出来ないこと、またサンリオが回答する立場にない質問もありますことをご理解ください。

サンリオはイスラエルの消費者が、“仲良し”を標榜するサンリオのキャラクターが付されている商品を求めているので、その需要に応えるだけであります。

以上ご理解の程宜しくお願い申し上げます。

最後に、貴会のホームページに掲載されている当社への公開質問書を拝見いたしました。そこに当社の著作物であるハローキティが使用されておりますが、著作権法で当社の許諾なくしてはどなたもご利用いただくことができないものです。ハローキティを削除していただきますようお願いいたします。

「ハローキティ・ストア」のイスラエル出店強行についての抗議と要請

以下は、上記の サンリオからの回答 と出店強行を受けて、サンリオに送った抗議と要請です。

株式会社サンリオ 代表取締役 辻信太郎 様
cc President of Sanrio GmbH, Roberto Ranzi

フェイスブックで得た現地情報によれば、去る7月3日、貴社は、多くの反対の声を無視して、テルアヴィヴ近郊のギヴアタイム・モールへの「ハローキティ・ストア」出店を強行されました。貴社が、アパルトヘイト国家イスラエルから利潤を得るという選択を敢えておこない、パレスチナ人たちが呼びかけるBDSキャンペーンに対決する姿勢を示されされたことについて、私たちはパレスチナにおける公正な平和を願う市民団体として、深い失望と抗議の意を表明します。

しかも、貴社は、私たちが6月13日付でお送りした公開質問書に対し、同月29日付の回答を送付されましたが、その中で、イスラエルにおける新たな店舗が「サンリオの直営でもフランチャイズでもなく、資本関係もない卸売先の運営」であることを理由に、「サンリオが回答する立場にない質問」もあるとして、質問書の具体的内容についてはほとんど一切答えられませんでした。

しかしながら、イスラエルのイェディオット・アハロノット紙が今年2月18日に報じた記事によれば、イスラエルを訪問していた貴社の副社長・辻邦彦氏と100%出資の子会社サンリオ・ゲーエムベーハーの社長ロベルト・リンチ氏は、同紙記者に「イスラエルの市場は大きな潜在力をもっている」と答え、二種類ある「ハローキティ・ストア」の店舗形式のどちらが適当か決めるために、出店候補地の視察までされています。

つまり、今回の出店は、海外事業拡大方針のなかで貴社が利潤を求めて主体的に決定されたことであり、また現地企業との契約に際し、店舗の経営様式等についての詳細な取決めをされていることも常識的に推測できることです。「卸売先の運営」であることを理由に貴社がその説明責任を逃れようとすることは非常に不誠実な対応だと言わざるを得ません。

新たな店舗がイスラエルのアパルトヘイト政策に加担する可能性があるとの指摘を各方面から受けているのであれば、貴社の責任においてしっかりと調査し、もし、そうした可能性があると判明すれば、店舗の撤退も含め、国際法に違反しないための方策を検討すべきであるし、そうした可能性がないということであれば、そのことを消費者・国際社会に対してしっかりと説明すべきです。

アラブ・イスラーム地域にも積極的に進出されている貴社が、当該地域において最もセンシティブな問題の一つであるイスラエルのパレスチナ人抑圧に加担している可能性があるということは、グローバル企業として、また上場企業としての社会的信用に関わる問題です。

また、私達の質問書には、貴社が2006年頃にライセンス契約をされているLDI社に関わるものもありましたが、そのことについては全くお答えいただけていません。LDI社の親会社であるマパル・コミュニケーションズ社のトップ二人は、エルアル航空の幹部でもあり、両社は、同系列資本の下で経営されています。エルアル航空は、イスラエル軍と連携して兵器の輸出入に携わるなど、同国の戦争犯罪に深く関与している企業であり、現CEOは、元イスラエル空軍司令官のエリエゼル・シュケディ氏で、第二次レバノン侵略戦争の際の住民虐殺に責任を負う人物として知られています。

この事実は、貴社が私達の質問に正面から答えないまま、イスラエル出店を強行されたことと併せて考えると、貴社が、実はイスラエルのアパルトヘイト政策を積極的に容認されているのではないかという疑いを抱かせるに十分なものです。上述したイェディオット・アハロノット紙の記事および6月25日に報道された同紙の記事では、「ハローキティ・ストア」のイスラエル出店が、ユダヤ人のパレスチナ入植を意味する「アリヤー」という言葉で表現されています。パレスチナの植民地化、パレスチナ難民の帰還拒否とセットとなった人種主義的概念としての「アリヤー」の実行主体にハローキティがなったとするこれらの記事の表現は、貴社の意図がどのようなものであれ、イスラエルにおいてすでにハローキティが「ユダヤ人だけのための国家」という人種主義的虚構を下支えするキャラクターとして受け入れられようとしていることを示すものです。

私達は、貴社が、「広く社会とのコミュニケーションを図る」、「国内外の法令や社会規範及び会社規程を遵守」する(サンリオ・コンプライアンス憲章)との方針に基づき、再度、今回のイスラエル出店が、パレスチナ占領にあらゆる意味において関与・加担していないことを明らかにされることを要請します。その際、前回送らせていただいた質問書の各項目について、具体的なお答をいただければと思います。もし、それができないのであれば、国際人権法と国際人道法の理念に基づき、即刻、今回の出店に関する現地企業リーダー・ブランズ社との契約を破棄されることを要請させていただきます。

なお、貴社は、私達の質問書に対しては、ほとんど具体的な回答をされていなかったにも関わらず、当会ウェブサイトに掲載していた、私達の主張のささやかな視覚的表現(占領に加担するのをいやがるハローキティ)についてだけは、いち早く著作権法に基づく削除を要求してこられました。当会は、貴社から、イスラエル出店問題の本質に正面から向き合った、より誠実な回答を頂けることを期待し、当該個所を削除したことを付記させていただきます。

また、余計なお節介かもしれませんが、当会以外の国内外の諸団体・個人から送られた質問書に対し、貴社は、まったく回答をされていないというように聞いています。もしそうだとすれば、“世界中を「仲良し」でいっぱいにしたい”という理念を標榜して海外事業をさらに広く展開されようとしている多国籍企業としては、世界中の市民・消費者の声を著しく軽視した「手抜き」の態度であると思わざるを得ません。善処されますよう、希望します。

2011年7月16日(土)パレスチナの平和を考える会

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