パレスチナの平和を考える会

横浜市とテルアビブ‐ヤッフォ市の交流協力に関する共同宣言についての質問

2012年8月30日、横浜市が下記の発表をしました。

平成24(2012)年は、昭和27(1952)年に日本とイスラエルが外交関係を樹立して60周年となります。テルアビブ-ヤッフォ市長と林文子横浜市長がこの機会に会談し、共に成長することに向け、世界の平和と発展に貢献することを目指して、両市の交流と協力を深めていくことを共同声明することになりました。

横浜市:テルアビブ-ヤッフォ市と交流協力を共同声明

これを受けて、パレスチナの平和を考える会では、横浜市長に対して以下の質問を送りました。

横浜市とテルアビブ‐ヤッフォ市の交流協力に関する共同宣言についての質問

横浜市長 林文子 様

去る9月5日に貴市がイスラエルのテルアビブ‐ヤッフォ市(以下、テルアビブ市)との間で調印された共同宣言に関して、パレスチナにおける人権と平和の問題に関心をもつ市民として、深い憂慮を表明します。つきましては、以下の3点についてお答えいただきますよう、よろしくお願いします。

  1. 宣言文には「世界の平和と発展への寄与」がうたわれていますが、イスラエルによる対パレスチナ人政策、とりわけ西岸地区とガザ地区における占領が、世界の平和に対する大きな障害となっていることはご存知かと思います。私たちは、貴市がテルアビブ市と進めようとされている経済交流や学術交流の対象に、国際法上違法な占領政策や人権侵害に深く関わる企業や研究機関がかかわる可能性について憂慮しています。テルアビブ市には、パレスチナの占領・土地接収を行ってきた国防省本部や超法規的な暗殺を繰り返してきたイスラエル空軍総司令部があります。また、そうした軍事機関と協力関係にあるテルアビブ大学のINSS(The Institute for National Security Studies)をはじめ、イスラエルの軍事政策の立案・実行に加担してきた研究機関や企業が数多くあります。イスラエルの花形産業とされているIT企業の多くも、イスラエル軍や軍需産業と切り離せない関係にあります。さらには、ソーダストリーム社のように違法入植地に工場をもつ企業もあります。
    こうした企業や研究機関との交流に関し、貴市が何らかの原則をお持ちかどうか、お聞かせください。
  2. テルアビブは、周辺にあった7つのパレスチナ人の村を破壊・併合することで発展してきた町です。ヤッフォ(アラビア語でヤーファー)は、もともと、パレスチナ人の町でしたが、イスラエル建国によって多くの住民が追放され、難民にされました。イスラエルでは、こうした加害の歴史を学校で教えないようにする政策が近年強化されており、そのことがイスラエルにおけるパレスチナ問題への理解を阻害しています。他方、日本においても、周辺諸国・諸民族に対する加害の歴史をいかに直視し、教訓とするか、という課題があることは、1993年の河野談話などにも見られるよう、政府見解とされているにも関わらず、いまだに歴史教科書等の問題が継続していることはよくご存じのことと思います。
    「お互いの成長」を目指すとする両市の交流と協力において、日本とイスラエルがともに抱える民族排外主義の問題や歴史認識問題の課題を公正な民族和解の実現に向けて、どのように克服されようとしているのか、お聞かせください。
  3. 貴市が今回の共同宣言を調印されるにあたり、「イスラエル問題」を中核とする中東和平問題に対してどのような姿勢をもたれているのかについて、私たちは深い疑念をもっています。宣言文には、パレスチナ人、あるいはアラブ人についての記述がまったく見られません。テルアビブの「経済発展」の裏には、封鎖や移動制限等のアパルトヘイト政策によって「創造的な夢の実現」や「革新的なアイディアを育てる」可能性を奪われているパレスチナ人がいます。中東和平問題に対するヴィジョンを欠いたまま、イスラエルとの一方的な交流・協力をすることは、パレスチナ人が被っている不正をさらに深めることにしかなりません。
    この点について、貴市の見解をお聞かせください。

2012年9月20日

パレスチナの平和を考える会

参考: 日本国横浜市とイスラエル国テルアビブ‐ヤッフォ市の交流協力に関する共同宣言

Proclamation of Exchange and Cooperation between the City of Yokohama,Japan, and the City of Tel Aviv-Yafo, State of Israel

The year 2012 marks the 60th anniversary of the establishment ofdiplomatic relations between Japan and State of Israel.

At this commemorative meeting between Fumiko Hayashi, Mayor ofYokohama, and Ron Huldai, Mayor of Tel Aviv-Yafo, on 5 September 2012,we, the City of Yokohama and the City of Tel Aviv-Yafo, proclaim thatwe will seek to deepen our exchanges and cooperation towards mutualgrowth, contributing to the peace and development of the world.

On this occasion, we confirmed our common vision to become a placewhere people from around the world come to launch their creativedreams and nurture innovation. We discussed our aim to cooperate andengage in a series of actions, including: promoting entrepreneurshipand creativity, developing innovative models as startup cities,encouraging arts and culture towards creative models as startupcities, encouraging arts and culture towards creative urban centers,encouraging academic exchange, and dedicating ourselves to ecologicalinitiatives.

日本国横浜市とイスラエル国テルアビブ‐ヤッフォ市の交流協力に関する共同宣言
(翻訳:パレスチナの平和を考える会)

2012年は、日本とイスラエルの外交関係樹立60周年を記する年です。

2012年9月5日に林文子横浜市長とロン・フルダイ・テルアビブ‐ヤッフォ市長との間でおこなわれた、この記念すべき会談において、私たち、横浜市とテルアビブ‐ヤッフォ市は、お互いの成長のための交流と協力を深め、世界の平和と発展への寄与に努めることを宣言します。

この機会において、私たちは、世界中の人々がその創造的な夢の実現に着手し、革新的なアイディアを育てるために訪ねてくるような場所になるという共通のヴィジョンを確認しました。

私たちは、一連の企画に協力・参加する目的について次のようなことを議論しました。起業家精神と創造性の育成、新しい事業をスタートするための都市にふさわしい革新的モデルの発展、創造的都市の中心となるための芸術や文化の促進、学術交流の促進、環境保護のためのイニシアチブをとること、などです。

2012年9月5日