2013年3月4日
日本国総理大臣 安倍晋三 様
貴政府は、長年保持してきた賞賛すべき武器輸出制限に例外措置を設け、米国製F-35戦闘機の共同製造計画において、イスラエルに武器の部品を輸出することを容認する決定を最近行いました。私たちはこのことに深い憂慮を表明するために手紙を送らせていただきます。この決定は、日本の外交政策の危険な変更を示すものであり、中東地域における日本の役割について深刻な先例をもたらすものです。
これまでイスラエルは、繰り返し国際法を侵害し、占領地の併合による領土拡大を目的として、武力紛争を誘発ないし主導してきました。たとえば、ゴラン高原の併合は、国連総会によって侵略行為であると認定されています。
60年以上前、パレスチナ人に対する組織的民族浄化を暴力的に開始して以来、イスラエルは、何百万人ものパレスチナ人および周辺諸国の他のアラブ人に対し、際限のない死・負傷・強制移住・剥奪・破壊をもたらしてきました。
イスラエルは、占領・植民地主義・アパルトヘイトの不法な体制を維持するために軍事力を使用しています。そのようにして、彼らは、可能な限り、多くの土地を支配しようとしています。そして同時に、先住パレスチナ人の人口を減らすことで、パレスチナ人が自ら保持する自決権を行使できなくしようとしているのです。
占領地におけるイスラエル入植地にかんする国際調査団による最近の国連の報告書は、国際法によって確定された諸規範に対するイスラエルの侵害行為について、加盟国が責任を負うことを求めています(1)。したがって、日本は、イスラエルの戦争策動に協力するのではなく、むしろ制裁を与えることによって、パレスチナ人の権利の尊重を確保しなければなりません。
(1) 【PDFファイル】入植地にかんする国際調査団による国連の報告書
F-35戦闘機の製造に参加するイスラエルの軍需企業であるエルビット・システム社は、国際司法裁判所による2004年の勧告的意見(2)によって違法と宣言された西岸地区のアパルトヘイト壁に装備を供給しています。そのため、最近の国連の(独立専門家による)報告書(3)においては、エルビット・システム社が、ボイコット対象企業であり、ノルウェー政府によって倫理基準違反を理由に資本引揚げの手続きが取られたこと(4)が名指しで指摘されています。エルビット社と結果的にであれ、かかわりをもつことは、イスラエルの違法行為に対する国際的な問題認識が共有されつつある現状に逆行する行為であるといえます。
(2)国際司法裁判所による2004年の勧告的意見
(3)入植地ビジネスのボイコットに関する国連報告書
(4) エルビット・システム社に関する報道
F-35の第三国への売却をアメリカが「厳格な管理」をできるという日本の想定は、同国が2000年から2009年にかけてだけでも240億ドルの兵器をイスラエルに供給してきたこと、また、国際社会におけるイスラエルの説明義務を不当に庇ってきたことを考えれば、完全に破たんしています。アメリカは、2015年に20機のF-35戦闘機をイスラエルに供給する予定です。その後も55機が追加注文される可能性があります。イスラエルの高官は、F-35によって「地域における軍事力の質的優位」が得られると主張しています。つまり、地域の諸民族を脅し、屈従させる自由裁量が与えられるということです。それは、イランに対する破壊的戦争の可能性をも含むものです。
日本の厳しい武器規制政策においてイスラエルを例外扱いにするという恐ろしい決定は、日本国内でも多くの議論と反対の声を引き起こしていますが、アラブ地域においては、日本のイメージを大きく傷つけるものであり、このプロジェクトにかかわる日本企業をして、パレスチナ人に対する正義をもとめる世界中の人々による大衆的ボイコット運動の標的とならしめるものです。パレスチナ人が呼びかけるBDS(ボイコット・資本引揚げ・経済制裁)運動の広がりによって、イスラエルの不法で非道徳的な行動に加担することは、深刻な結果を伴うものになりつつあります。こうした動きは、自由を求め、外国の支配や介入に反対して行われた最近のアラブ蜂起によって、さらに強くなっています。
パレスチナBDS全国委員会(BNC)に代表される、パレスチナの市民社会は、イスラエルに対する事実上の武器禁輸措置であるはずの原則に例外を設ける決定をただちに撤回することを求めます。そして、F-35戦闘機の共同製造計画への関与をただちに中止し、日本製の武器やその部品、そして日本企業は、国際法に反するイスラエルの違法な侵略行為を支える役割を決して担ってはならないという明確な意志を示すことを求めます。
敬具
ザイド・シュアイビー
パレスチナBDS全国委員会を代表して